tomo-G の日常

定年退職後のG(爺)の日常です。

酒亭「海彦」

f:id:tomtom331220:20240324204922j:image

ふた昔も前のはなし、新橋に『海彦』という酒亭があった。
釣り好きの大将が脱サラをして始めた店で、7、8人も座れば肩が触れ合うカウンターと、6人も座れば足も崩せぬほどの小さな小上がりのある店を、大将と元気な二人の老姉妹が切り盛りしていた。
あの二人の老婦人は、本当に姉妹だったのか?
どちらか一方のご婦人は、大将のつれあいだったのか?
聞かずじまいだった。
当時、子育ての真っ最中だったGの小遣いでは、月に何度も通うことは適わなかったけれども、この店で美味しい魚を教わった。
赤ムツ(ノドグロ)が今ほどポピュラーじゃなかった時代、その刺身や一夜干しに初めて出会ったのはこの店だったし、石鯛の刺身がどれほど旨いか教わったのもこの店だった。
冬になるとねっとりと舌に絡みつく、自家製のカラスミなんかも出してくれた。
僕はあまりイケるくちではないけれど、この店に来たときだけは冷酒専門だった。

ところが、海外赴任から5年ぶりに戻ってふらりと立ち寄ろうとしたけれど、店が無くなっていた。大将も随分年配だったから、引退したのか…、知る術はない。
こういう酒亭が少なくなって、安居酒屋のチェーン店ばかり増えるのを寂しく思うのはGだけだろうか。